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「人権教育のための国連10年」兵庫県推進連絡会

〒650-0004 兵庫県神戸市中央区中山手通4丁目10-8

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『差別を許さないシステムづくりを〜土地差別調査事件から見えてきたもの〜』
/赤井隆史さん

【講演概要】

■大阪府民意識調査からみた人権状況
2005年の大阪府民意識調査で、結婚の時の身元調査について「当然のことと思う」19.7%、「おかしいと思うが自分だけ反対しても仕方がない」が22.5%、計43%。この数字は近年高まっています。次に「子どもの結婚相手で実際に気になったことは?」の質問に、24.9%が「相手が同和地区出身者かどうか」と答えています。そして、住宅を選ぶ際に、「同和地区や同じ小学校区にある物件を避ける」27.2%、「同和地区の物件は避けるが、同じ小学校区の物件は避けないと思う」16.2%。43%が部落を忌避するとしています。多分、兵庫県とさほど変わらないと思います。 何をもって部落の人と判断するのか。一番多いのは「本人が現在同和地区に住んでいる」、次が「本籍地」「出生地」です。その次が父母の居住地、本籍地、出生地。そして祖父母の居住地、本籍地、出生地と続きます。このフィルターにかけて素通りする人が何人いるでしょうか? 1000万人近くは部落に見なされる差別を受けるということになるでしょう。

■ 人生の節目で差別
11年前、アイビー・リックという調査会社が採用の時に調査をしていた事件があります。「適正と能力」、その2つで判断しなさいというのが労働省の指導ですが、調査会社が会社からの依頼で身元調査をする。いくつかの例を資料につけていますが、「解放会館の隣」とわざわざ書き、部落を示す記号がつけられています。 結婚、就職、家を買うといった人生の節目に差別がはびこっています。

■土地差別調査事件とは
家を買うというときの差別が、最近明らかになった「土地差別調査事件」です。 例えばデベロッパーが戸建ての家を30戸建てるときには、まずモデルルームを1、2区画だけ建てます。「5000万円」と値段をつけて、売れなければ4500万、4000万と下げていく。そして3600〜4000万で売れると思ったら、あとの30区画にその値段をつけます。しかし、マンションはそういうわけにはいきません。そこに目をつけたのが広告代理店です。予定地周辺のマンションの値段や残っている戸数、評判などを調べて報告するのです。その中に、近くに同和地区があれば「敬遠されるエリア」などと書かれていました。そういう差別的報告書が300近く我々の手元に集まっています。広告代理店がリサーチ会社に報告書を作らせ、広告代理店は問題表現とわかりながらデベロッパーに渡し、デベロッパーもそのまま受け取っていた。この仕組みが今ようやくわかってきました。 土地差別調査事件が発覚したのは、リサーチ会社に務めていた人から大阪府への内部告発です。大阪府個人情報保護条例には、同和地区等に関する教示は個人情報保護条例の侵害行為にあたるという規制があります。 宅建業の免許は知事免許か大臣免許ですから、違反した業者の免許に規制をかける働きかけをすることです。次は大臣免許に規制をかけたい。人権侵害救済法の議論の中でそういった議論もしていきたいと準備しています。

■人権侵害に歯止めをかける取り組み
数年前の戸籍等不正請求横流し事件を受けて、昨年6月に大阪の狭山市で本人登録型の通知制度ができました。戸籍や住民票は大事な個人情報で、勝手に持ち出すのは違法です。それができる職業が弁護士など8士業です。昔、弁護士になりすまして戸籍を取っていたという事件があり、我々が運動をして職務上請求書ができました。管理はそれぞれ弁護士会や行政書士会などがしています。それでも職務上請求書を使って戸籍を取得し、興信所などに横流しする事件が後を絶ちません。そこで市民が登録をしておくと、戸籍や住民票が取られた場合に教えてくれる制度として、大阪府下では富田林市、高槻市、御崎町などでもできました。この6月からは埼玉県の全市町で実施されます。愛知や広島でもできています。憲法では人権は平等に保障されていますが、これから人権格差が各市町村の間で出てくるのではと思います。 人権侵害救済法ができれば、地域的な相談機能が充実され、一定、被害者救済に役立ちます。その次は差別禁止法。そういう形で人権侵害に歯止めをかけていかなければなりません。

■「差別不拡散」の市民運動を
我々はよく差別撤廃と言いますが、これからは「差別不拡散」という考え方も大事だと思います。核をなくすのは大事なことだが、すぐには無理で、まずこれ以上核を増やさないでおこうという考え方と同じです。差別不拡散というのは水平運動だと思います。これ以上差別・人権侵害を増やさない市民運動の展開が必要だと思います。

    ■赤井隆史
(あかいたかし)
■部落解放同盟中央本部執行委員

     

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