【講演概要】
■事件の概要〜犯行の動機
2003年5月から2004年10月までの1年半、約550日間にわたって、東京を中心に全国の被差別部落出身者や他のマイノリティ(ハンセン病快復者・在日外国人・障がい者などの被差別者)に対し、悪質な差別はがきが大量に送りつけられるという重大な事件が起こりました。犯行の内容は、@標的とした被害者に「お前はえた、ひにんのくせに生意気に東京に住みやがって、出ていけ、死ね」、「お前の家の周囲に、お前が部落民だということを暴露してやる」などの悪質極まりない内容。他にも、被害者の名を騙り、高額の物品を注文したりガスや電気を止めたりなど卑劣で凄まじいものでした。犯人が出したはがきや手紙などの被害総数は400。その中で最も多く標的とされたのが私でした。
2004年10月に犯人は逮捕されました。犯人は東京都羽村市に住む当時34歳の男性。彼は東京生まれの東京育ちで両親と3人での生活を送りながら、自宅で犯行を繰り返していました。2004年12月から東京地裁において裁判が始まりましたが、この裁判の中で彼は犯行の動機を、「大学卒業後なかなか就職できず、強いストレスを抱えていた。部落民は自分より下だという漠然とした差別意識があった」、「自分とは全く無関係の部落民を徹底的に差別することでストレスを解消しようと思った。罪の意識もなく、悪いことをしているとは全然思わなかった」と話しています。2005年9月に懲役2年の実刑判決が確定しました。
■何が求められるか?〜事件から学ぶこと
社会の二極分化が進み、若い人の間にも様々な鬱積や不満が高まっています。この「不満のはけ口」に利用されるのが社会的差別。今回の事件はそのことを証明しました。今回の犯人やネット上に差別書き込みをする人の多くは、「実際の部落のことは知らず」に部落差別をします。そのため、犯行は熾烈かつ無惨なものになり、被害者の受ける傷も大きくなる。事件の真相が明らかになり犯人が反省したからと言って、被害者が救われるわけではありません。世間に広く流布している偏見や誤った情報への的確な対応を強化し、被害者救済の方法論を確立していかなければならないと思います。
■浦本誉至史 (うらもとよしふみ) ■部落解放同盟東京都連 |
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