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「人権教育のための国連10年」兵庫県推進連絡会

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『若者の部落観 なぜ部落にマイナスイメージをもってしまうのか』/石元清英さん

【講演概要】
 部落問題はこれまで、学校教育や市民啓発など様々なところで語られてきたが、実態と一般的理解が大きくずれている。
 大学で部落問題をはじめとする差別問題について授業をしているが、最初に、部落に対するイメージや部落問題に関する意見や考え方についてアンケートを取っている。
 同和教育、部落問題学習を受けた経験が「ある」人も「ない」人も、イメージとして多いのが「暗い」「貧しい」「閉鎖的」。また「部落では部落民でない人との結婚がむずかしいため、近親結婚が多い」「企業は身元調査を行って部落出身者を採用しないことが多いか」という意見について「そう思う」「どちらかといえばそう思う」を足すと半分を超える。近年では八割ぐらいは部落外の人と結婚しているのに全く知らない。戦前は部落出身者同士の結婚が大半を占めていたが、その通婚圏は非常に広く、部落で近親結婚が多かったということはない。就職差別についても、現在では面接で親の職業や家族構成を聞くことが違反質問になっているのに知らない。学生たちには現在の部落がどうなっているのか、そこではどんな人たちが暮らしていて、どういう生活をしていて、どういう思いでいるのかという、具体的な部落の様子や姿が見えない。
 これまでの同和教育で、「差別はいけない」ということだけを強調し、江戸時代の身分制に触れるだけの授業や差別の厳しさの一面的に強調してきた結果、部落というのは、どこか知らないところに、自分たちとはまったく違った血筋の人たちが代々住み続けている閉鎖的な地区がある、というイメージを持ってしまう。
 授業では、「部落差別の根拠の一つは『血筋』だと言われるけれども、血筋は実際、部落差別の根拠になっていない」という話をする。学生に曾祖父母の名前を聞くと、ほとんどの学生は知らない。祖父母四人の名前を正確に言える学生もそれほど多くない。例えばAさんがBさんを部落民だとみなし差別的な言動を行ったとする。Bさんをどうして部落民とみなしたのか。六代ぐらい前の江戸時代にさかのぼって、Bさんの六代前は穢多あるいは非人身分だったと確認した上でBさんを部落民とみなすのか。そんなことは不可能だ。自分自身の三代前がわからないのに、赤の他人の六代前がわかるはずがない。結局、部落と呼ばれているところに住んでいる、あるいは住んでいた、住んでいたかもしれないということで部落民とみなすわけで、部落差別が「部落」「部落民」を作っている。
 部落差別はなくなっていないが、変化している点も踏まえて部落問題に対する語り方を変えていかないといけないのではないか。いま現在の部落を伝え、誤解・偏見を正していく必要があると思う。

    ■石元清英
(いしもときよひで)
一般社団法人ひょうご部落解放・人権研究所所長

     

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